Home » Education » 【編集版】うつ病、適応障害、発達障害、どんな職場で働くのが正解なのか説明します。コミュニケーションが多い職場、ルールが多い職場? #仕事の悩み #発達障害

【編集版】うつ病、適応障害、発達障害、どんな職場で働くのが正解なのか説明します。コミュニケーションが多い職場、ルールが多い職場? #仕事の悩み #発達障害

Written By 精神科医がこころの病気を解説するCh on Sunday, Aug 08, 2021 | 07:00 AM

 
03:45 4つの型 09:40 型の比較 15:50 発達障害の人の場合 17:42 今後は環境変化の大きい仕事が増えていく ※2020年10月4日公開の動画の編集版です。 今日は組織について「どのような仕事を選べば良いか」という視点でお話しします。 ある患者さんと次にどのような仕事をすれば良いのかという話をしているときに、「THE TEAM 5つの法則(麻野耕司 著/幻冬舎 2019)」という本のアイデアを借りました。 仕事を選ぶ際に職務内容や給料も大事ですが、自分に合っている職場かどうか、ということも大事です。 実際、その組織の空気感が合っていれば仕事の内容や給料はあまり関係ないのではないかと思っています。それよりも、コミュニケーションの量が自分にとって多すぎる/少なすぎる、ルールが多すぎる/少なすぎる、規模が大きすぎる/小さすぎるなどいろいろあります。 給料や仕事の内容では人の幸福度はあまり変わらず、組織というカルチャーがあって、それを選ぶことが大事です。 ■4つの型 職場の「型」を、「環境変化」と「連携・コミュニケーション」の2軸で4つに分けました。 ・柔道団体型 環境変化が大きくて、コミュニケーションがあまり多くない職場です。 柔道は団体でやったとしても戦うときは1対1ですし、相手はどんどん変わっていきます。 仕事で言うと生命保険の営業などがこれにあたります。 一人でお客さんへの提案からクロージングまで行います。精神科医の仕事もこれに近いかなと思います。 ・駅伝型 個人でやることが多く、変化も少ない職場です。 駅伝は人と接するのは襷を渡すときだけです。 例えるならば、工場の生産チームです。 ・サッカー型 環境変化が大きくて、コミュニケーションも多い職場です。 サッカーはチーム内でも頻繁にコミュニケーションを取ってボールを回さないといけませんし、相手の変化にも瞬時に対応しなければいけません。 スマホアプリの開発などがこれにあたります。 ・野球型 連携は多いけれど、環境変化は少ない職場です。 バッターひとりに対してみんなでやります。バッターはボールを打つだけですから予想外の動きも少ないです。 仕事で言うと、飲食店のスタッフチームなどです。 自衛隊や公務員も野球型だと思います。 ■型の比較 ・連携の大小 サッカー型はチームの成果になります。アプリの売り上げが上がれば「皆の評価」になります。 逆に駅伝型は成果が出たときは個人の成果がはっきりわかります。 サッカー型は多様です。ディフェンダー、ゴールキーパー、フォワード、ミッドフィルダーではやることが結構違います。連携はしますが、練習内容や求められることが違います。 逆に駅伝型はみんな足が速ければ良いので、クローンのように全員同じでも良いわけです。 均質的な組織となります。 ・環境変化の大小 プロジェクトごとにチームを作るなど、環境変化が大きいほど転職がしやすいです。 サッカー型のSE、柔道団体型の営業職、編集者などは転職が多いイメージです。 逆に駅伝型や野球型は転職がしにくいです。 野球型でも飲食店のアルバイトの人は転職が多いかもしれませんが、基本的には少ないです。 パン屋なんかは駅伝型だと思います。転職はそう多くないでしょうし、採用も厳しいイメージです。 ・チーム/個人 野球型になるほど、チーム監督の発言がすべてになり独裁が強まります。独裁が悪いというわけではありません。ルールが多かったり、上下関係が厳しかったり、プロセスが重視されます。銀行や官僚の世界も野球型です。 柔道型になるほど、個人主義で監督の言うことというよりはその場の選手の判断が重視されます。自分で考えることができないといけません。ルールやマニュアルは少なく、結果が重視されます。 よく野球の議論で、監督はバントの指示を出したけれど、選手は打った方が良いといってホームランになった場合それは評価されるべきかというものがあります。基本的には野球は監督の指示に従うべきで、結果的にホームランになったかもしれませんが、それではよくありません。プロセスを重視しなければなりませんので、1回のファインプレーよりも組織の秩序です。 逆に柔道型では結果を出さないと意味がないので、理論ではなく実践重視です。 4つの組織の型では求められるものやカルチャーが結構違います。 「自分はこうだと思うけれど、どうして組織はわかってくれないんだ」と思うことがあるかもしれませんが、それはそういうものです。型によってカルチャーが違うので合っているところに行った方が良いと僕は思います。 患者さんの気持ちを聞いていて、苦しみや葛藤もわかりますし、でもここの会社はそうなんだろうなとも思います。 ■発達障害の人の場合 発達障害の人の場合にどのような職場を選べば良いかというと、ASDの人が働きやすいのは教科書的には圧倒的に「駅伝型」です。変化が少なく、コミュニケーションが少ない職場です。 ADHDの人は「柔道団体型」が向いています。変化が少なく、コミュニケーションが多い仕事です。   噂話に付き合う必要もありませんし、一人で情熱を持ってやっていけば良い職場です。 ただ、本当にそうなのかとも思います。 ASDの人は均質を求められることやマルチタスクが苦手ですので、一芸型ならばサッカー型も良いのではないかと思います。言うならば天才型ストライカーです。全然コミュニケーションは取らないけれど、ボールが近くに来たら必ずシュートを決めます。 また、独裁がうまく行っているならば、変化が少ない野球型も発達障害の人は働きやすかったりします。 ルールも決まっていますし、コミュニケーションも独裁がうまく行っていればそれほど臨機応変な対応を求められることはありません。誠実にコツコツと真面目にやっていけば大丈夫です。 ■今後は環境変化の大きい仕事が増えていく では何が問題かというと、今後AIが発展すると駅伝型や野球型の仕事がなくなってしまうということです。 例えば、介護の仕事は機械が入りにくいので駅伝型や野球型でも残っていくと思いますが、タクシーやバスの運転手の場合は自動運転が浸透すれば仕事が少なくなります。 職人の仕事も工場に取られることもあります。 ですから、今後は環境変化の大きい仕事が増えていきます。 その中でマルチタスクが苦手な場合、サッカー型にどううまく入っていけるのか、サッカー型が無理ならば柔道型でどうやってやっていけば良いのかということを考えます。そのようなことが求められます。 どれが良いかわからなければ「やっぱりやりたいことをやるのが良いのでは、内容が大事なのでは」というところに議論は戻るのですが、いろいろな型をぐるぐる回りながらどこが良いのか探してもらえたらと思います。 僕自身で言えば、組織から抜けてこうして一人でやっているのは結構合っていると思います。 まとめると、コミュニケーションが多いから良い職場、マニュアルがしっかりしているから良い職場、というわけではありません。独裁だから悪いわけでもありません。 どこにも長所と短所があり、仕事に合った組織カルチャーがあります。 ------------ 問題を抱えた集団がとる行動について解説(リーダーとグループ) https://youtu.be/0_ZRZnrW7BA 鬱っぽいとき、悩んでいるときにまずコレから始めてみよう https://youtu.be/w9b-3tXAIK0 ------------ 『精神科医がこころの病気を解説するChとは?』  一般の方向けに、わかりやすく、精神科診療に関するアレコレを幅広く解説しています。動画における、精神分析や哲学用語の使用法はあくまで益田独自のものであり、一般的(専門的)な定義とは異っているところもあります。僕がもっとも説明しやすいとたまたま感じる言葉を選んだだけなので、あまり学術的にとらないでいただけると嬉しいです。                  早稲田メンタルクリニック院長 益田裕介 『自己紹介』 益田裕介 防衛医大卒。陸上自衛隊、防衛医大病院、薫風会山田病院などを経て、2018年都内で開業。専門は仕事のうつ、大人の発達障害。といいつつ、「なんでも診る」ちょっと変人よりの町医者です。 趣味は少年ジャンプとお笑い。キャンプやスキーに行きたいです。 2020年6月5日より断酒継続中。 【参考】 厚労省みんなのメンタルヘルス https://www.mhlw.go.jp/kokoro/ カプラン 臨床精神医学テキスト第3版 #職場 #適応障害 #発達障害